「生活自立学習の習得課程について −養護学校生徒の学校教育と家庭での生活実践の結びつきの相違を通して−」 養護学校の家庭科についての研究はまだあまり行なわれていないが、それらの研究の中で、養護学校の家庭科の実態が明らかになり、養護学校の家庭科は生活の自立を目標として行われていることや、生活自立の習得には、家庭との連携が重要であること、個に応じた指導や教材の工夫が重要であること、保護者の考える自立とは何かということなどが明らかになった。これらの研究を調べるにあたって、いくつかの疑問点が生じた。それは、@多くの研究者が、養護学校の家庭科を生活の自立と結びつけて述べていたが、生活の自立とはどのようなことなのか。A家庭との連携の重要性を多くの研究者が述べているが、裏付けとなる調査はまだ行なわれていない。本当に家庭との連携によって学習効果は得られるのであろうか。これらの疑問点を解消することを目的に本研究を行った。 【方法】 文献調査により、生活自立学習とはどのような学習であるのかを位置付ける。また、養護学校において、実際に行われている生活自立学習を対象に、授業観察および調査を行った。調査は、社会生活能力検査、学校の評価表、家庭へのアンケートの通り行った。これにより、生活能力の指標である生徒の社会生活年齢、学校での学習、家庭での生活実践との関係を多面的に調査することができた。 【結果及び考察】 T養護学校における調査によって以下のことが明らかになった。 @家庭での実践の頻度が多いのは自分自身に関する生活自立学習である。日常的な家庭の仕事は「時々する」という生徒が多く、普段あまり行われない家庭での仕事は「しない」と答えた生徒が多かった。 A学校でよく行なわれているのは、日常的に行なわれる生活自立学習の基本的な項目である。 B家庭で生活実践をしている生徒のほうが学校での生活自立学習の習得率が高かった。 C社会生活年齢が低い生徒ほどその傾向ははっきりと現れ、高い生徒は家庭での実践に関わらず生活自立学習の習得度が高かった。 これらの結果から、養護学校において、家庭との連携をとることにより、生活自立学習の習得に良い効果が得られることがわかった。 【まとめ】 養護学校において、生活自立学習を家庭で実践している生徒のほうが学校での習得度が高いという関係性が明らかになった。また、養護学校での生活自立学習の学習は家庭でよく行なわれる基本的な学習が適しているということが分かった。学習を進める際に、社会生活年齢にあった課題を用意することも効果的である。このような個人のニーズに合った学習を家庭との連携のもと行っていくということは養護学校のみならず、普通学校においても重要である。 |